イベントレポートサイボウズ Office 見学ツアー
医療・介護の現場で広がる活用と
楽しく使える環境づくり
- 医療法人豊資会グループ -
2018年7月12日に九州エリアで初の「サイボウズ Office 見学ツアー」が開催された。会場は、福岡県新宮市を中心に医療・介護保険関連事業を営む豊資会グループの加野病院。参加者はサイボウズ Officeを利用中の方と利用を検討中の方、合わせて30名だ。豊資会からは社会福祉法人豊資会理事長の加野豊子氏をはじめ、システム課課長の中島氏のほか、訪問介護など現場のスタッフの方々にも登壇いただき、サイボウズ Officeの活用方法と「現場で使いやすい業務システム」にするための工夫についてお話しいただいた。
サイボウズ Office 見学ツアーとは?
サイボウズ Officeを導入している企業を訪問して、グループウェアの活用について学ぶツアーです。
INDEX
顧客も職員も満足できる医療・介護サービスを
― 豊資会グループのこと ―
はじめに、社会福祉法人豊資会の加野豊子理事長から、豊資会グループの事業内容やサイボウズ Office導入の背景が語られた。
豊資会グループは主に医療・介護事業において、4つの法人で9施設26事業所を展開。2018年4月で社員、パート、嘱託なども含めて476名の職員がいる。
豊資会グループが拠点とする地域は、日本でも人口増加率が高いため競争相手も多い。それだけに医療・介護で着実なサービスを届ける必要がある。そこで豊資会グループでは、「迅速」「正確」「気配り」を基本理念とし、「顧客満足、職員満足、地域満足」をビジョンとして掲げている。
「命に関わるとても重い責任が生じる医療・介護の仕事に私どもは就いています。サービスを提供してお金をいただきますが、職員のモチベーションにつながるのは利用者様からの『ありがとう』という感謝のお気持ちです。だから自分たちのサービスに責任と誇りを持って提供したい。そのためには、職員がハッピーな状態であることが重要です。そこで顧客満足と職員満足をビジョンとして掲げています。」(加野豊子理事長)
成果が続々!現場で広がる活用法
― サイボウズ Office 活用方法 ―
豊資会では理事長から医療や介護の現場のスタッフまで、全職員にサイボウズ Officeのアカウントを発行している。今回は実際に利用している現場の職員の方々から、サイボウズ Officeの活用方法が発表された。
1デイサービスの掲示板
豊資会では「掲示板」に53のカテゴリーがある。楽しく使うをモットーにしており、ブログ風の投稿も多い。数ある掲示の中から今回紹介されたのは、デイサービスでの活用法だ。
デイサービスとは、介護認定を受けた人が日帰りで通い、食事や入浴、レクリエーション、機能訓練等を受けられる介護サービスだ。中でもレクリエーションは利用者の身体機能の維持向上だけでなく、脳の活性化やコミュニケーションの促進によって生きがいを創出するきっかけにもなると言われている。
豊資会のデイサービス施設では、お昼ごはんを利用者につくってもらうというレクリエーションを実施していた。もっと楽しくやりがいを持ってレクリエーションに取り組んでいただくにはどうしたらいいかを職員で話し合っていたところ、「つくった料理を食べにきてくれるお客さんがいれば、もっと作る意欲が高まるのでは」というアイデアが生まれた。そこでサイボウズ Officeの「掲示板」でグループ内の職員に告知して、食べにくるお客さんを募集することになった。
最初は、「お母さんのカレーあります」というタイトルで「掲示板」に投稿した。すると、病院の職員やケアマネージャーなど他の施設からもたくさんのお客さんが集まった。おかげで利用者は料理づくりのレクリエーションをワクワクした表情で、非常に楽しんでいたという。
この取り組みは成功し、その後も焼き芋、のど自慢、そうめん流しなど恒例行事になっている。今では、リアクションボタンをそうめん流しの時には「ちゅるんっ!」にするなど、「掲示板」上で多くの職員に関心を持ってもらうための工夫も行われているそうだ。
「デイサービスは複数の事業所があるので、『掲示板』を通じてお互いの事業所の活動内容を知って参考にしたり、いい刺激になっています。」(デイサービスどんぐり 広渡氏)
「自分の働いている施設に以前通われていて、現在別の事業所を利用されている方が、楽しそうにレクリエーションに参加されている様子を『掲示板』を通じて知ることができるのが嬉しいです。」(デイサービス新宮中央 吉田氏)
2カスタムアプリ「呟いて日報ツイート報」
続いて、中島氏よりシステム管理課の業務日報について紹介された。従来、システム管理課では毎週月曜日に前週の活動報告書を作成していた。報告書はExcelで2~3時間かけて作成し、印刷して会議で共有するスタイルだったため、月曜の朝は早めに出勤して準備していた。それを毎日の活動ごとにその都度カスタムアプリ「呟いて日報ツイート報」に登録し、それを共有する運用に変更した。
<カスタムアプリ 「呟いて日報ツイート報」 運用ルール>
- 遅くとも翌日までに登録
- 短くてもいいので、内容が伝わること
- 所要時間を入れること
「呟いて日報ツイート報」を導入した結果、まずは月曜日に早く出勤する必要がなくなった。会議では、カスタムアプリをiPadの画面で共有するので、ペーパーレス化も実現。会議の場だけでなく、活動をリアルタイムで共有できるのでお互いの活動に対して、質問やアドバイスができ、システム管理課のスタッフ間での連携もスムーズになった。さらに、活動ごとに所要時間を入れることで工数の集計が簡単にできるようになったことも大きな効果だ。
「この日報アプリで工数を集計してみたところ、1年間に約5,870分を移動に費やしていることが分かりました。私は普段クリニックで勤務していますが、打ち合わせのためにグループ内の各施設に行くための移動が多かったのです。そこから無駄な移動は削減しようと、極力リモート会議にするといった改善につながりました。」(中島氏)
3APIカスタマイズ事例
~電子カルテ&介護システムとスケジュールの連携~
APIを使った豊資会グループ独自のカスタマイズによる活用も紹介された。
※パッケージ版に限定して配布していたサイボウズ Office連携APIドキュメントによるカスタマイズです。新規お申し込みは2018年9月28日(金)をもって終了しております。
電子カルテとサイボウズ Officeのスケジュールの連携
豊資会グループでは、医師が電子カルテ上に登録されている診療スケジュールとサイボウズ Officeに登録されている診療以外のスケジュールを見比べながら、手術のスケジュールを決め、電子カルテにオーダーを入れていた。そのオーダーを元に、紙の手術予定表に転記、手術室の設備予約システムと医師のスケジュールに入力するという作業を看護師が行っていた。この一連の業務を電子カルテとサイボウズ OfficeをAPI連携させることで、効率化したのだ。
「以前は、この手術予約を電子カルテから転記・入力するのに1件あたり10~15分の時間がかかっていました。今では、電子カルテにある『転送』の『予約』にチェックを入れるだけで設備予約システムに登録され、先生の『スケジュール』にも反映されるようになりました。2~3分あれば終わります。さらに手入力による入力ミスもなくなりました。時間の短縮と情報の精度が上がり、非常に助かっています。」(外来看護師 原田氏)
訪問介護システムとサイボウズ Officeのスケジュール連携
豊資会の訪問看護ステーションでは、訪問予定を介護システムで管理してきた。訪問については、急なキャンセルや伝達事項の追加など、日々職員間で連絡・調整が必要となる場面が非常に多い。介護システムには外出中はアクセスできないため、以前は訪問介護ステーションのマネージャーが介護システムから1カ月分の全員のスケジュールを印刷して持ち歩いていた。利用者様100名、職員20名分のスケジュール用紙は40枚超。キャンセルや連絡事項が発生する度に外出先でその紙を広げて担当者を確認し、連絡するのは非常に負担が多く、伝達ミスも発生しやすい状況だった。
そこでAPI連携により、介護システムに登録された訪問予定をサイボウズ Officeの「スケジュール」に同期するようにカスタマイズを行なった。これによってマネージャーは、ipadでスケジュールの確認・調整ができるようになった。
「とにかく荷物が軽くなりました。常に最新の情報を確認できるようになりましたし、情報を探すのも楽になり、伝達ミスがなくなりました。とても重宝して使っています。」(訪問看護ステーション 藤谷氏)
4現場による活用促進の試み
豊資会グループの「カスタムアプリ」は、もともと各部署からの要望を受けてシステム管理課で作成していた。しかし中島氏は、現場の業務を最も理解しているスタッフ自らが「カスタムアプリ」を作れるようになれば、さらなる業務改善が期待できるのではと考え、社内でカスタムアプリ養成所「カスタムアプリ虎の穴」を始めた。
養成所といっても、実際に集まるのではなく、サイボウズ Office内の「メッセージ」を使って、情報共有するという取り組みだ。メンバーは約27名。メンバーが「カスタムアプリ」の作成で相談したいことを書き込むと、システム管理課がアドバイスのコメント返す、といったやり取りを行っている。また、システム管理課からは社内で作成された新しい「カスタムアプリ」や、サイボウズが発信する活用事例や「カスタムアプリ」を紹介している。
このカスタムアプリ養成所「カスタムアプリ虎の穴」から生まれたアプリの一つが「つたえるぞーさん【訪問看護版】」。作成したのは、訪問看護ステーションで勤務する訪問看護ステーションやまびこの関屋氏だ。
訪問看護ステーションで、もともとノートに書いて行なっていた申し送りや引き継ぎを「カスタムアプリ」で行うことにした。
カスタムアプリ化したことで、訪問看護のメンバー全員にリアルタイムで申し送りや引き継ぎの内容を共有することができるようになった。さらに、訪問時に患者様の症状(褥瘡など)によって画像を撮影し、メール読み込み機能を使って「カスタムアプリ」に登録できるようになった。これによって、さらに具体的な報告が可能となり、症状に応じた適切な処置が可能になった。
「伝達事項がある患者さんや緊急電話の対応が必要な患者さんなどを絞り込み設定して、ダイレクト表示しています。該当する患者さんのデータがワンクリックで表示できて、探す手間がなくなり、スムーズに対応できるようになりました。その他にも訪問看護の指示書の期限についても切れそうなもの、切れているものを色分けするなど自分たちの業務に合わせて設定できるので、便利です。」(訪問看護ステーションやまびこ 関屋氏)
5社内浸透の取り組みの歴史
現場での活用が進む豊資会グループで、17年に渡って管理者を担ってきた中島氏。社内浸透のための取り組みには歴史がある。
この浸透と運用を支えるために、中島氏はシステム管理者として様々な工夫をしている。
- 「カスタムアプリ」の名前を親しみやすいものにする(例:営業報告用アプリ「アタック象さん」など)
- 「ワークフロー」の申請書の並びを組織ごとにまとめて見やすく表示する
- 入社後の研修はセキュリティに関することのみ。使い方については特に説明せず、必要な情報は掲示板に掲載
- サイボウズから発信される活用事例、配布アプリ、デザインギャラリーのほか、コミュニティの情報で参考になりそうなものを「掲示板」で紹介
さらに2年に一度、現場のスタッフが使い慣れている「ワークフロー」で利用状況についてのアンケートを実施し、「カスタムアプリ」で集計している。それによると、サイボウズ Officeを毎日利用する人が82%、11%の人が2~3日に1回ぐらい利用という状況だった。
「アンケートでは、日ごろは直接会話をしない人からの情報を得ることができます。またいろいろな活用のアイデアが含まれたコメントも寄せられます。それらを元に社内の運用改善につなげています。具体的には、サイボウズ Officeをパソコンで見る頻度が少ない人向けに、必ず確認すべき情報(例:介護現場での申し送り事項など)は、壁掛けの大きなモニターにサイボウズOfficeを全画面表示で映すことを検討しています。」(中島氏)
中島氏は、人の命と接する医療と介護という仕事の中で「サイボウズ Officeを職員がホッと一息つけるような場にしたい」と考え、前述のデイサービスの掲示板のような情報の掲載に積極的に取り組んでいるという。そしてこのような運用について職員のアンケートで「賛同する」77%、「大いに賛同する」14%と90%以上が支持するという結果が得られている。
導入から浸透まで運用の秘訣に迫る
- 質疑応答コーナー -
最後に、見学ツアー参加者からの質問にも、回答いただいた。
Q.導入後の社員の反応はどうでしたか?
導入した17年前は、「パソコン操作がはじめて」というメンバーもいました。そんな中で、全員が使う残業や有休届をワークフロー化した衝撃は、かなり大きかったと思います。操作に慣れるのに時間がかかったメンバーもいたと思いますが、全員で取り組むことで根付いたのではと思います。
Q.通常業務にシームレスに導入するにはどうしたらいいでしょうか?
「何をしたいか」「何をするか」を欲張らず、一つか二つ決めてお試し期間を使って、現場のコアなスタッフと検証するといいと思います。
Q.社員にとってサイボウズ Officeを導入するメリットはなんでしょう?
「何を目的にするか」によると思いますが、3つ上げるとすれば
1)コミュニケーションの活性化
2)情報共有
3)情報の伝達速度がアップ
ですね。
Q.複数の拠点間での対応や職員さんへの利用方法の説明はどのようにしていますか?
あまり力を入れていません。教える手段としては現場に足を運ばず、リモート接続やiPadでのテレビ会議で操作のサポートや説明を行っています。
Q.社員の方は、どうやって使えるようになっていると思いますか?
1)使えないとお仕事できない仕組みにすること
2)面白いコンテンツがあること
3)直感的に使えること
4)人まねをすること
がポイントだと思います。
今日の見学ツアーはいかがでしたか?
―参加者からの感想―
時間が足りないぐらい、メニューが豊富でした。 見学する場所も多く医療と介護の一体化・統合化が凄いスピードで進化している様を見ることができました。 また、病院スタッフの皆さんがシステム活用に情熱を注いでいる...何か熱いものを感じました。
導入の際、必ずIT知識のレベル差が問題になりますが、そこを前向きにとらえ全社で取組んでいる点、そこに経営者の意志が必須という点が参考になりました。
「掲示板」の使い方が業務連絡だけでなくフレンドリーな使い方もされていたので、苦手な方でも前向きに触れることができるのかな?とも思いました。
豊資会中島様より活用例を丁寧に提示していただきとても参考になりました。講師としてお話しいただいた現場の方々から受けた印象から、システムの方が「使いやすさ」を追求された様子がうかがえます。
医療法人豊資会グループ様、そしてご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。